【検証】無分配のインデックスファンドに複利効果はあるのか!?(国内株式編)

投資本などを読んでいると「分配金を出さないインデックスファンドは、複利効果を活かすためにバイ・アンド・ホールドすべき」という言葉に出会います。

株式を対象とする投資信託ETFは通常、現物株を保有しているため、ファンドに配当金収入があります。
配当金収入からファンドの運用にかかる経費を差っ引いた分*1が分配金相当額となります。

ETFは通常、この分配金相当額を投資家に分配します。
これに対しインデックスファンドの多くは、この分配金相当額をファンド内に留保します。

これによって無分配のインデックスファンドは、

 ①分配金を出さないことで税を繰り延べできる(税の繰り延べ効果)
 ②留保した分配金相当額をファンド内で再投資することができる(複利効果)

の2つを生み出していると考えられます。

ただし、インデックスファンドの交付目論見書を読んでも、 

 ③収益の分配にあてなかった利益については、運用の基本方針に基づいて運用を行います。(eMAXIS TOPIXインデックスファンド) 

としか書かれておらず、税の繰り延べ効果はともかく再投資がなされているかよく分かりません。もしかしたら、単に分配金相当額を積み上げているだけかもしれません。

というわけで、検証してみます。

使用するファンド

使用するファンドは日別基準価額と分配金実績が簡単に把握できる三菱UFJ国際の次の2つのファンドを利用します。

 eMAXIS TOPIXインデックス(以下「eMAXIS」という。)
 MAXIS トピックスETF(以下「MAXIS ETF」という。)

検証方法は、eMAXISが運用を開始した2009年10月28日における両ファンドの基準価額に対する騰落率を比較します*2

eMAXISはこれまで分配金実績がないため、ファンドが保有する現物株から出る利配収入はファンドに留保されています。そのため、基準価額を検証に使います。

MAXIS ETFは、毎期分配を行っているため、基準価額にその時点における分配金累計額(課税分 20.315%控除後)を加算したものを検証に使います。

eMAXISがMAXIS ETFを有意な差でアウトパフォームすれば、無分配のインデックスファンドにおいて留保された分配原資は再投資され複利効果が生み出されていると解釈できます。

運用ベースの比較

それではまずインデックスファンドの基準価額とETFの基準価額+分配金累計額(税控除後)の運用ベースによる比較を見てみましょう。
2つのファンドの基準価格の変動は、ほとんど同じに見えます。

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しかし、実際にeMAXISとMAXIS ETFの差分は次のようになります。

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グラフは上下していますが、概ね右上がりと言えます。
9月15日現在の騰落率は、

 eMAXIS 109.7%
 MAXIS ETF 101.3%

その差は8.4%になります。このうち、税の繰り延べ効果は、

 MAXIS ETFの(課税前分配金累計×20.315%)÷スタート時点の基準価額

により3.4%程度と想定されます。
そのため、複利効果は8.4%-3.4%=5.0%となり、検証期間が概ね7年であることから、年0.7%となります

売却ベースの比較

上記の運用ベースは、売却時の課税(キャピタルゲイン課税)を考慮していないため、現実的な課税を反映した売却ベースでも計算してみます。

売却ベースの計算にあたっては、スタート時点の基準価額を上回っている場合(売却益がある場合)は、次の計算式を使います。

 基準価額-(基準価額-スタート時点の基準価額)×20.315%

スタート時点の基準価額を下回っている場合は、基準価額がそのまま売却額となります。
また、MAXIS ETFについては、運用ベースと同様に税控除後の分配金累計額を売却額に加算します。

それでは、eMAXISとMAXIS ETFの騰落率の差について確認してみます。
なお、分かりやすくするために先ほどの運用ベースの差分を赤破線で記載しています。

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このグラフを見ると税のインパクトの大きさがよく分かります。

9月15日現在の差を比較すると、運用ベースで5.0%の複利効果があったのですが、売却ベースでは3.9%まで小さくなっています。年ベースでは0.56%になります。*3

コスト差を取り除いたリターン

eMAXISの実質コスト(税込)は0.436%、MAXIS ETFの実質コストは0.08%*4であることから、eMAXISはそもそも0.356%/年(税控除後 0.284%/年)のビハインドを背負っています。

コスト差を取り除いたリターンは複利効果 0.56%+コスト差 0.284%=0.844%/年となります。

まとめ

以上のことから無分配のインデックスファンドは利配収入を再投資し、複利の効果を生み出していると結論づけて良いと思います。

ただし、グラフでもわかるとおり、インデックスファンドとETFの差は、時に0%近いこともあるため、預金における着実な複利効果と同様に考えるべきではありません。

今回の検証はあくまで無分配のインデックスファンドの再投資による複利効果を検証するものであり、ETFと優劣を比較するものではありません。

検証のためETFは、投資家が受け取った分配金を再投資しないという足枷がはめられています。もし分配金を運用すればインデックスファンドをアウトパフォームする場合も考えられます。

一方で、インデックスファンドも昨今、信託報酬の引き下げ競争が激化しています。今回の検証に使ったeMAXIS TOPIXインデックス(信託報酬 0.40%)は、後発のeMAXIS Slim 国内株式インデックス(信託報酬 0.18%)に比べ信託報酬が0.22%/年も高くなっています。
そのため、より低コストのファンドを用いればETFとの経費の差が縮まり、その分、インデックスファンドとETFの騰落率の差は広がると推測されます。


*1:厳密には売買益等も含まれますが、簡便的にこのように表記します。

*2:MAXIS ETFは、2009年5月14日設定。

*3:鋭い方はお気づきかと思いますが、運用ベースの複利効果が分かれば売却ベースの複利効果は細かく計算する必要はありません。単に、「運用ベースの複利効果×(1-20.315%)」で算出することができます。

*4:モーニングスターより